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Report

X Meeting Spanish Society for Developmental Biology 〜 Postdoc symposiumに参加して 〜

開催期間:2014年10月13日 ~ 15日
開催場所:Hotel Rafael Atocha, Madrid, Spain

名古屋大学大学院理学研究科附属臨海実験所・
特任助教 白江麻貴

 私は平成26年10月13〜15日、貴新学術領域研究から旅費助成を受け、スペインマドリッドにて X Meeting Spanish Society for Developmental Biology のポスドクシンポジウムに参加しましたので御報告いたします。
 これは日本発生生物学会が海外学会との交流促進を狙い企画したもので、海外学会と一部のシンポをジョイント形式で行うという試みです。この二国間ジョイント・シンポジウムはhome & away方式で行われました。つまり、本年5月には名古屋での日本発生学会年会にスペイン発生学会会員が参加・発表し、10月にはマドリッドでの年会に日本の会員が参加・発表しに行くというものでした。今回、スペイン遠征要員募集に関して高橋淑子企画長から吉田松生先生に呼びかけがあり、吉田先生からご推薦いただいた結果、私の渡西が実現いたしました。第一に、このような挑戦的な企画に参加する機会を与えていただいた高橋淑子先生、阿形清和先生、そして何よりご推薦いただいた吉田松生先生、旅費援助にご同意いただいた小林悟先生に深く感謝いたします。
 スペイン発生学会はマドリッドのHotel Rafael Atochaで行われました。口頭発表53演題にポスター発表125演題、会場は各1室と日本に比べるとコンパクトでしたが参加者は多く、発表者は弁舌滑らかで聴衆のリアクションも良く、明るく活気に溢れたラテンな学会でした。国内学会ですので圧倒的にスペイン人が多く、ポルトガル人、フランス人が少数といったところでした。日本人参加者は10名程おりましたが、海外開催の国際学会でも味わえないような圧倒的なaway感が新鮮でした。発表はMorphogenesis & Organogenesis, Systems biology & genomics, Evolution & development, Postdoc symposium, Development & disease, Stem cells & reprogramming, そして特別シンポジウムであるMadrid flies-an homage to Gines Morata (ハエシンポ)に分類されていましたが、残念ながら生殖細胞関連の演題はありませんでした。また全体的にハエ・マウスなどいわゆるモデル動物を扱った仕事が多く、唯一ホヤを含む海産動物における分子進化のポスター発表を行っていた研究者に聞いたところ、ウニ・ホヤ・ナメクジウオなどはイタリアのナポリから入手しているとのことでした。日本発生生物学会においては幅広い動物種の興味深い発生現象が研究発表の対象となっていますが、このような傾向は必ずしも世界共通ではなく、国それぞれの立地や歴史背景に依存することを再認識いたしました。
 Postdoc symposiumは、フランス、ポルトガル、スペイン、そして日本のポスドク計6名が15分ずつ自分の研究を紹介するというものでした。私は“Molecular Analyses of a Dual Mechanism for Germ Cell Specification in the Ascidian, Ciona intestinalis”(※)という演題で「原索動物カタユウレイボヤには、母性因子依存的な生殖細胞形成機構以外に、尾部切除時に顕在化するような後生的生殖細胞形成の機構があること、現在その機構を解析する為に人工ヌクレアーゼを利用したG0ノックアウト解析やノックインを行っていること」を発表いたしました。「カタユウレイボヤの後生的生殖細胞は通常発生でも生じる第二の生殖系列なのか、尾部切除による再生現象なのか」という質問を受け、「それを今後明らかにしていきたい」と答えましたが、この現象については多くの聴衆の興味関心を得られたようでした。ただ、解析内容に対する質問はありませんでした。生殖細胞分化機構の解析というテーマに対して聴衆の興味が薄いこと以外にも、今回発表したG0ノックアウト解析が、モデル動物を汎用している研究者にはプリミティブで不完全なものに見えるかもしれないと反省いたしました。早々にカタユウレイボヤにおけるゲノム編集手法を用いた生殖細胞分化の分子機構解析を軌道に乗せ、後生的生殖細胞の由来や誘導メカニズムを解析し成果発表しなければならないと、決意を新たにした次第です。
 本助成によって、スペイン発生学会の年次総会に参加することで海外の発生学研究者コミュニティーを肌で感じることができ、自身の今後の研究活動において意識すべきポイントを学ぶことができました。今回の学会参加を通して学んだ経験を生かし、今後の領域の発展に寄与できるようにさらに精進していきたいと考えています。最後に、こうした機会を与えていただいた新学術領域および関係者の皆様に深く御礼申し上げます。

(※)Poster
“Molecular Analyses of a Dual Mechanism for Germ Cell Specification in the Ascidian, Ciona intestinalis
Maki Shirae. Nagoya University, Nagoya, Aichi, Japan

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写真提供:白江麻貴

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